初めて浴衣を買った。
初めて着付けをした。
誰かに見せるのは、まだ恥ずかしくて。
でも夏を感じたくて…梅雨の晴れ間に、ひとりで外に出た。
浴衣はちょっと歩きにくいな。
焼き下駄がぎこちなく、からころ鳴る。
路地には誰もいないけれど、誰かに見られそうで。
仲間と一緒のときとは違う感覚に、僕は…。
ぜんざい屋さんでひと休み。
いつも食べてるスイーツより素朴だけど、浴衣だと何だか雰囲気が出るね。
もう少しだけ、遠出してみようかな?
こんな階段あったっけ…?
足がもつれないように、一歩一歩。
路地を抜けたら、いつもの街並み。
ビルの下に出た…。こんなところに繋がってたんだ。
僕はちょっと狐につままれた。
お陽様はまぶしく輝くと、にわかに傾いていった。
夕暮れが近くなって、ショーウィンドウに映る女の子に、心臓が高鳴る。
…なんだ自分じゃないか。
非現実との境目が無くなってゆくみたいで、怖くなった。
そんなに長い時間じゃなかったけど、初夏の刺激的( Spicy )な1ページ。
たぶん、僕はずっと忘れないと思う。
衣装提供 : yamadaya.tv